望郷


 元同僚のパキスタン人が、郊外の診療施設で診察の予約があるというので、車に乗せていった。

 この国では健康カードを申請すれば、外国人でも無料で医療サービスを受けることが出来る。しかし、健康カードの申請そのものが非常に厄介だ。彼も何度か申請が拒否されたりして、カードを受け取れたのは今年の始めになってから。

 そして、彼のような出稼ぎにとって、例え中古でも車を買うことは難しい。
 かといって毎回タクシーで移動となれば、少ない稼ぎを圧迫し、故郷への仕送りも滞ってしまう。

 かくも出稼ぎの暮らしというのは楽なものではない。それでも歯を食いしばって頑張れるのは、故郷で帰りを待つ家族がいるからだ。
 家族を守るためには時には狡猾になることもある。惨めな思いをしながらも乞わねばならぬ時もある。

 そんな彼らに同情などしても意味はなく、まして上っ面の言葉だけでは彼らの腹を満たすことなどできはしない。

 それぞれが自分の置かれた立場を自覚し、与えられた役割をこなしていくこと。ただただそれだけで、世界は回っていく。